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隆の部屋は本当は104号室だったわけだ。
きっと助けを求めて出てきたのかもしれないとは英明の考え。
「だからってなんで俺んち」
「だから本当はおまえの部屋が104だったんだよ。だから104へ来てって声が聞こえたんだな」
「え、おまえ声聞こえてたの?」
「うん。たぶんだからその女、見つけてほしかったんじゃないかな。別に怖がらせる気はなかったんだと思う。そう思いたい。ただ探し出してほしかったんだと思うわ」
「そうか。なんか怖かったけどそれ聞くとせつねえわな。やりきれねえ」
「だな。すんげー怖い思いしたけどなんか切ないな。ともあれだ、おまえは早く荷物まとめろ」
「わかった」
隆が少ない荷物をまとめている間、英明は台所をじっと眺めていた。
そこにはいまだに赤カビが発生していて、中には青いものもある。
アパートの上から人じゃない声が聞こえてきたが、あえて聞こえなかったことにしてぶるりと体を震わせ、荷物をまとめるのを手伝い、早々に部屋を後にした。
終
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