台所の女

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「おじゃまします。おじゃましたくないけど」 「まあ、入れ。うちはなんともないはず」 「そう願いたいだけだろ」 「ビールでも飲もうぜ」 ワンルームの部屋をクルッと見回し、「とりあえず部屋は大丈夫だな」と言うと綺麗に掃除されているカーペットの上に腰を下ろし、手渡されたビールをシュッと開けた。 ぐいと飲み干しぷはっとやる。 「でよ、なんでおまえここに引っ越して来ようとおもったわけ?」 「え、安かったし敷金礼金なかったから」 「おいそれおかしいって思わなかった? 普通あるぞ。ないのってやっぱそうなんかあるっていうか、そういうの考えなかった?」 「なかった」 ふーとため息をつきポテトチップスの袋に手を突っ込む。 「飲んで食ってしないとやってられんわ。とりあえず、早く出ろ」 「動けねえし」 「じゃあ仕方ねえから荷物まとめて俺んち来い」 「まじ」 「このくらいの荷物なら大丈夫だろ」
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