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怒鳴ったのが効いたのかどうかそれ以降音は聞こえなくなった。
隆と英明はその後二人で酒を飲み、彼女のことやサークルのこと、大学のことや今後の就活のことなどを話し込み、ビールが進むにつれ時間の感覚も忘れ、話に花を咲かせていた。
時計が二時を指したころ、英明が突如真面目な顔をした。
「でっさー、俺の彼女とこのまえ行った飯屋が超うまくて、しかも安いの、だから今度そこ行ってみない? ん? 英どうした?」
「……」
真っ青になっている英明は一点を凝視したまま動かない。
「ひで?」
「……」
「おいっ。ひで」
肩をどんと叩いて揺さぶると、英明がはっと目を隆に寄せた。
「おまえ、逃げるぞ」
震える小声で耳打ちすると、
「いいか、下だけ見てろ。ぜってー台所のところ見るな。で、俺に着いて来い。いいな」
本気の顔に隆もただ事じゃないと悟り、こくこくと頷き、額の汗を腕でぬぐった。
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