第1章

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 サクラは淡々と取り戻した自分の装備を装着しつつ、ピートが使っていたベレッタM9を掴んだ。 「アンタは運がいいな。あたしは普段357のライトロードのホローポイントを使う。弾はグチャグチャ潰れて貫通するけど、今回は防弾対応でハードロードのフルメタルジャケット弾だった。だから弾は綺麗に貫通しちゃったし、胸ど真ん中狙ったのに肩に当たった。だからこんな処刑劇する羽目になった」 「お、おい!! 情報は……!!」 「何度も言わせるな。あたしには関係ない、アンタは殺す。秘密米軍施設でここにはカメラも目撃者もない。アンタがあたしたちを殺そうとした証人も銃の証拠もある。10歳の女の子がたまたま銃を拾って反撃して殺したとしても、法で問われる事はない。そしてアンタは逮捕されれば死刑は確実、日本の司法でも米国でもね」  ジャキン…… 鋼鉄のスライドが9ミリ弾を鋼鉄の銃身の中に送り込む…… サクラはベレッタM9のスライドから手を離した。これで弾は装填された。視界ゼロの布袋の中のピートにも、その音が何かは分かる。サクラには躊躇も戸惑いもしない。恐怖のあまり大量の汗が流れ、喉が干上がる。本当に処刑する気だ。サクラは高い知力があり冷静、打算的で強い正義感を持っている。だが情報とまるで違うではないか。 「税金の無駄。同じ米国人のよしみで選ばせてあげるわ」  その言葉に、ピートはほんの一瞬、光を見た気がした。だが実際は悪魔の選択が襲い絶望はさらに深まる事になる。 「頭か心臓か腹か選べ。頭なら即死だけど死体は悲惨。心臓なら絶命まで60秒くらいは生きられるから余生がある。さらに腹なら肝臓を打ち抜くから、15分から30分ゆっくりと余生が味わえる。ま、すっきり死ぬか一秒でも余生楽しむか…… それくらいは選ばせてやる」  ……拷問だろ……!? 結局殺すのではないか!! ピートは大人という立場を捨て無様に助命を叫んだ。サクラは本気だ。情報でも.サクラは少女だが人を殺す事に全く躊躇しない、というのはあったが、想像よりはるかに冷徹だ。当然ピートは答えられない。サクラの溜息が聞こえた。 「じゃあ間とって心臓だ。下手だから外した時は2分くらい苦しめ」  サクラは真っ直ぐベレッタの銃口を心臓に向け、引き金に指をかけた。
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