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「ところでさぁ、前から気になってたことがあんだけど、聞いてもいい?」
「まあ、答えたくなかったら答えなくていいし」
カネケンの笑顔に一瞬、嫌な雰囲気を感じた。
「なに?」
「お前って独り言よくいうじゃん?」
「え?あ・・・うん」
胸が張り裂けそうな嫌な予感がした。
「いや、お前が独り言をいってるときに右目の引きつりがさぁ、一度すっげぇヤバイ感じになってて別人みたいな顔してたんだよね。アレってよくあんの?」
「え?引きつりって?」
初めて人から顔が引きつるなんて言われて動揺した。
カネケンは困惑し、余計なことを聞いて「しまった」といった顔をした。
カネケンは、しばらく考え事をするかのように腕組みをして下を向くと、スケボーで外側だけがボロボロになったEmericaのスニーカーの踵をコツコツと地面に当てながら小さく首を横に振った。
「もしかして、お前。顔が引きつってんの気づいてない?」
「なに・・・それ?」
心臓が破裂するんじゃないかと思うくらい激しく鳴った。
「マジでヤバイくらい引きつってんよ。誰もなんも言わない?」
「誰にも・・・なにも言われたことないけど・・・」
「マジか・・・余計なことを聞いちゃったかな・・・」
僕は最近、頭の中で声が聞こえないことと独り言を言わなくなったことで、すっかり自分がどんな感じだったかを忘れていた。
カネケンには、僕が独り言を言わなくなったこと伝えた。
カネケンは無理やり笑顔をつくると「なにかあったらいつでも連絡しな」とスマホの番号が変わっていないこととお互いのLINEが生きていることを確認しあってから人ごみに消えていった。
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