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しばらくすると、誰かに背中を思いっきり叩かれた。
その瞬間、目の前がもとに戻り、自分が道の端に立っているのを知った。
振り向いても誰もいなかった。
どこかで嗅いだことがある不思議な匂いがしたが、それがなんの匂いかはわからなかった。
ビルの窓に映る自分の姿を見ながら、「これまでの日常となにも変わらないんだ。落ち着け」と何度も唱えた。
久しぶりに聞いた唸り声は、僕を不安にさせた。
「大学に行かないと」
僕は黙って歩き始めた。
スマホを見ると、彼女から「都合が悪くなったので、ファミレスはキャンセル」とのLINEが入っていた。
僕は「了解」とだけ返信をした。
得体のしれない不安と恐怖が頭のなかを駆け巡り、胸が締め付けられた。
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