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それからしばらくの間、彼女と会うことがなかった。
お互いに避けていた訳ではなく、タイミングが合わなかった。
僕は大学3年の秋をむかえ、本格的に就職活動を始めた。
とくに希望する業界などはなかったが、できるだけ自由な時間が持てる会社がよかった。
就職説明会にも積極的に参加し、OGやOBに会えるとなれば気合を入れて会いに行った。
あのとき聞こえた声も、また聞こえなくなっていた。
何度か最終面接まで行ったが、なかなか内定が出ずに時間ばかりが過ぎて行った。
大学4年になり夏をむかえたところで、ようやく企業から内定をもらった。
就活を始めてほぼ1年かかっったが、周りには就職を諦めて海外に留学するやつや大学院に進学するやつもいた。
会社の規模は大きくなかったが、面接を受けたときの印象はとてもよかった。
就職も決まり落ち着いたので、彼女と卒業旅行のツアーをネットで調べたり、会社の近くに引っ越す準備も始めた。
すっかりカネケンに言われた「ひきつり」のことも忘れ、毎日遊んでばかりいた。
もうすぐ学生生活が終わる寂しさと、社会人になったら自由な時間がなくなるという焦りから卒業までの数カ月間を寝る間も惜しんで遊びまわった。
就活を始めたころからギターを持つこともなくなり、バンド活動は完全に活動休止状態だった。
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