契機

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このミスのせいでPCの入力が怖くなった。 何度も確認をするのだが、何度確認をしても正しく思えず、簡単な入力でも近くにいる同僚や部下に最終確認をしてもらった。 自分のミスが許せなく悩んでいたある夜、ベッドに入ると久しぶりに頭の中で懐かしい声が響き渡った。 「おっ・・・おっ・・・にぃぃぃ・・・ごぉ・・・」 「あがぁ・・・がぁぁ・・・あ・・がぁぁぁっ」 「おっ・・・おっ・・・にぃぃぃ・・・ごぉ・・・」 雑音とも聞こえる唸り声が頭の中を埋め尽くした。 僕は得体の知れない不安と恐怖に呑み込まれそうになり、自我を失わないように耐えた。 やがて声は耐えられないほど大きくなり、頭が割れるように痛くなった。 胃が焼けるように痛み、体がだるくなってそのまま気を失うように眠りについた。 「おっおっ・・・にぃぃぃ・・・ごぉぉぉ・・・」 「あぁぁぁ・・・あ・・・あ・・・ぁ、ぁ、ぁ・・・」 声が徐々に小さくなり、遠くのほうで誰かが泣いているようにも聞こえた。 眠りにつく瞬間、黒くて大きな陰が僕を覗き込むようにしている気がした。 「黒い人」がハッキリ見えた。 薄目にしたときに「黒い人」と眼が合った。 いや、眼のある場所にあるべき眼ではなく、頭の中で「黒い人」の眼を正面から見続けるような感覚だった。 表情はなかったが、笑っているような気がした。 僕はなにもできず、薄れ行く意識のなかで、もう日常に戻れないような気がして不安で涙が溢れた。  
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