中学生

4/5
434人が本棚に入れています
本棚に追加
/146ページ
中3の3学期に、頭の中の声に変化が起こった。 突然、声が2人になった。唸り声は誰の声かわからなかったが、僕の中で会話が成立しているように感じる相手が2人になった。 これまで一方的に怒鳴ったり唸ったりしていた男の声とは違い、新しい声は、年配の男で穏やかで常に優しく僕にアドバイスをしてくれた。 その声は滅多に聞こえなかったが、僕が悩んでいたり疲れているとき、何かに落ち込んでいるときに現れた。 「大丈夫。お前は悪くない・・・悪いのはあいつらだ。お前は悪くない」 「お前ならできる。他人の言うことなんか気にするな」 「お前に嫉妬しているだけだ・・・。お前は・・・特別・・・」 「お前は誰よりも優れている。・・・だから」 新しい声が聞こえるようになってから、僕は頭の中で怒鳴り声が響いていても平常心を保てるようになった。 ただ、どうして急に声が増えたのかはわからなかった。 そして唸り声が聞こえているときは、ハッキリと陰を見るようになった。
/146ページ

最初のコメントを投稿しよう!