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龍一の携帯が警告音を鳴らし、美百合から送られるはずの発信器の信号が消えたことを教えた。
ハウスの中で、秋冬用のイチゴの苗の生育状態を見ていた龍一は、慌ててジーンズのバックポケットから携帯を取り出し、最後に発信が途絶えた場所を表示させる。
そこは、あまりにもありふれた、美百合がいつも買い出しに行く、スーパーマーケットだった。
家から2キロも離れていない。
龍一の目と鼻の先で……。
龍一は歯噛みして、愛車のプジョーに向かって歩き出す。
やはり政府から派遣されたボディガードなどに任せずに、100%自分の手で美百合をガードしていればよかった。
いや美百合を外になど出さず、完全要塞に仕上げたこの家の敷地内に閉じ込めて置けばよかったのだ。
それより、自分のこの腕の中に、胸に、しかと美百合を抱いて捕えて、そのまま離さなければ、こんなことにはならなかった。
だんだん暴走していく思考も、龍一が冷静ではいられない証拠だった。
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