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龍一は、加賀見に背中を向けると、ぐったりと横たわる美百合の元まで戻った。 美百合の顔の側にひざまずき、 「美百合、お前が俺を引っ張り出すんだ」 美百合の体がピクンと震える。 声にならない美百合の戸惑いを受けて、龍一は艶然と微笑んだ。 「見ればわかるだろう。このままじゃ、俺も苦しい」 龍一のそこは誇らしいぐらい我を張っている。 「俺は今両腕が使えない。だから、お前がその手を使って、ベルトを外し、俺を出すんだ」 それはボクにさせて! 加賀見は叫びたかった。 だが、 「慌てるな」 美百合に言っているようで、実は加賀見に聞かせている声は、色っぽくかすれ艶めいている。 「すぐだ」 ついに龍一の官能の姿を見られる喜びが、加賀見の怒りを超えた。 美百合は、横たわったまま、おずおずと腕を伸ばして、前に膝を進めた龍一のベルトに手をかける。 その手は、震えているのではないだろうか。 龍一のそれを目にする期待と、それから少しの恐怖とで。 「力を入れすぎて、握りしめるなよ」 からかう口調で言う龍一の声が、耳をなぶり切ない。 美百合はますますぎこちない手つきで、龍一のベルトをはずした。 前のボタンを外し、ゆっくりとファスナーを下ろす。 龍一は、低く切なげな声で、 「そうだ。やさしく触れ。十分気をつけるんだ。そいつは、危険物だぜ」 ささやいた。
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