10

3/8
前へ
/78ページ
次へ
美百合は、 「行かないでよ」 願った。 龍一は背中を向けたまま、 「……怪我をさせた」 呟く。 美百合の体は加賀見に殴られたせいで、所々血が滲み、腫れあがっている。 無理に動かそうとすれば、ジンジンと焙られたような熱さが美百合を責める。 「平気」 美百合は答えた。 「怖い目にあわせた」 「龍一が来てくれたじゃない」 龍一の背中が細かく震えだす。 「……あんなに、ひどい目に……」 やはり龍一は、自分が原因で美百合を傷つけたことを、誰よりも悔やんでいる。 「俺はお前を、汚してしまうんだ」 龍一の背中に、美百合はぶんぶんと首を振った。 「龍一を信じてるから、私なら平気なの」 足を踏ん張り立ち上がる。
/78ページ

最初のコメントを投稿しよう!

57人が本棚に入れています
本棚に追加