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美百合は、
「行かないでよ」
願った。
龍一は背中を向けたまま、
「……怪我をさせた」
呟く。
美百合の体は加賀見に殴られたせいで、所々血が滲み、腫れあがっている。
無理に動かそうとすれば、ジンジンと焙られたような熱さが美百合を責める。
「平気」
美百合は答えた。
「怖い目にあわせた」
「龍一が来てくれたじゃない」
龍一の背中が細かく震えだす。
「……あんなに、ひどい目に……」
やはり龍一は、自分が原因で美百合を傷つけたことを、誰よりも悔やんでいる。
「俺はお前を、汚してしまうんだ」
龍一の背中に、美百合はぶんぶんと首を振った。
「龍一を信じてるから、私なら平気なの」
足を踏ん張り立ち上がる。
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