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裂けるような痛みが美百合を襲ったが、その程度の苦痛は、龍一の背負っている苦しみほどではない。
体の傷の話ではない。
自分を『化け物』だと言う、血を流し続ける龍一の心が、美百合には痛くてたまらなかった。
美百合はこのまま、龍一をこの場から去らせたくなかった。
龍一の心を、孤独へと追いやりたくはなかった。
「私を見て、龍一」
腕を下ろし、裸の全身をさらした。
「私はもう汚れてるよ。龍一に言えないことだっていっぱいある。そんな私とは、もう一緒にいられない?」
龍一が自分のことを化け物だというのなら、美百合も同じ化け物になりたかった。
龍一が抱えている、過去の傷を分かち合いたかった。
傷を癒すことは出来なくても、龍一を二度とひとりにはしない。
ずっと後悔し、悩み、苦しみ続ける龍一の心の側にいて、寄り添っていたいと願った。
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