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「逃げたぞ。追えっ!」
谷口は叫ぶ。
ほんの一瞬の隙をつかれた。
これだから龍一は油断できない。
「止めろ。発砲許可」
谷口は怒鳴り声をあげる。
そこまでの権限を、谷口は許されていた。
上司も、龍一が一筋縄ではいかない相手だと認識しているのだ。
谷口の命令に、走る龍一の肩がピクリと揺れる。
そして同じように谷口の命令に驚いている仲間たちが銃を構えて、それぞれに静止を叫ぶ。
だが、龍一は止まらない。
許可が下りたからといって、誰も簡単に発砲など出来るはずがない。
龍一は仲間が立ちふさがっている正面を避け、門とハウスの隙間から外にすり抜けるつもりらしい。
だが、それを許すわけにはいかない。
『驚いたよな。俺も実はビビってるぜ』
谷口は心で思う。
そしてニューナンブを構えた。
両手でしっかりと握り、右肩を少し引いた、訓練通りの構えから、一発発射する。
威嚇のつもりだから、当然、龍一には当たらない。
だが谷口の発砲をきっかけにして、仲間の銃も次々と火を噴いた。
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