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「お前なんかと結婚するんじゃなかったよ」
トオルは、吐き捨てるように言った。
由果子はベッドの上で、ゴミ捨て場に捨てられた人形みたいにピクリとも動かない。
室内には、血の匂いが満ちていた。
「いつも俺のことを見下しやがって」
トオルは、由果子の経営する会社で「専務」という肩書にあった。社長である由果子とは、婿養子という形で入籍をした。
仕事の要領が悪いトオルに、由果子はいつも厳しい口調で怒鳴りつけた。
他の社員たちの前で罵声を浴びせられるたびに、トオルの由果子に対する憎しみは大きくなっていった。
そしてその夜、家に帰ってからも仕事のことで罵声を浴びせられたトオルは、今まで我慢していた怒りが爆発してしまった。
キッチンに走り、そこにあった洋包丁を掴み取った。
それから乱暴に由果子をベッドに押し倒して、無我夢中で犯行に及んだのである。
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