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もう一度、彼を見る。
今なら顔もちゃんと見えるし、水飲み場の淵に腰掛けた先の足もちゃんと、ある。
でもその代わり、体が透けて見えた。それがなにより彼が生きていないことを物語っていて、でも恐いとか、幽霊だとかなんて思うことはなかった。
「私も、同じ目にあわせようとしたの?」
彼がなぜ虐めらていたのかは、わからない。でも私は虐められてはいない。もちろん、気の合わない同級生もいるし、目を合わせなくないクラスメイトもいる。
「君が俺を見てたって、気付いたから……」
「バカ兄。わたしはこんなこと繰り返したくないっ」
目に涙を浮かべて、私の手を握る友美。私も、握り返した。
「うん、この子は連れていけない。もうしないよ」
ちょっとお兄さんぶった言い方で、女の子の頭をそっと撫でた、彼。そして、ふと私を見てそっと耳打ちした。
「君は卒業するまで、この真ん中の蛇口を使ってね」
「どうして?」
「……ナイショ」
最後の耳打ちは、なぜか……頬っぺたに触れた。
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