超・妄想コンテスト 『水場の恐怖』

捻って溢れるのは水じゃなく、逆に捻っても収まらないんだ

ついでに彼は、こんな話もした。

「ここで死んでからずっと、ここで水を飲む人達を見てきたんだよね」

事件のあとすぐには誰も使わなかったし、大人の対応として水飲み場は使用禁止になっていた。しかし、掃除の時の不便もあって、あっさり一年で使用禁止は解除され、何事もなかったように生徒に使われてきた。

「やっぱり、さっきのあいつらみたく、イタズラするやつは何人もいたんだよ。だから、ちょっと脅かしてやったりもした」

ほんのちょっと楽しそうに笑う彼は、人を苛める素質があったのかもしれない。冗談だけど。

とにかく、蛇口を捻ったのに水が出ないとか、ちょっと捻っただけで全身ずぶ濡れとか、冬なのに生暖かい水が出てきたりとか……。

そんな話を彼に聞いたあと、その日のホームルームで先生からお知らせがあった。

「これから夏本番になると、熱中症などの体調不良が心配されます。なので来週から、用意ができれば明日からでも、みんな水筒を持参して使うように。中身は水かお茶。学校でもむぎ茶を用意するので、帰りまでに中身がなくなった人は遠慮なく汲んで、水分不足にならないように。それから……」