捻って溢れるのは水じゃなく、逆に捻っても収まらないんだ

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あの水飲み場で水を飲む生徒は、格段に減るだろう。いや、いなくなる。 三組の女子生徒から、蛇口のイタズラを先生に報告していたということもあり、水筒持参は職員室ですでに検討されていたのだった。 「……誰も使わないの?」 彼の声が聞こえる。 ぴちょん。 ……ぴちょん。 ぴちょん。 これは、蛇口から落ちる水滴の音か。 それとも、私の肩の後ろで涙をこぼす彼の涙の音か。 それからというもの、あの水飲み場でイタズラした生徒達は、水飲み場の前を通るたび水難の相に合うらしい。 濡れた床で滑って転ぶとか。 流したバケツの汚れた水が、顔にかかるとか。 石鹸で手を洗った後水で流してもいつまでも泡立つとか。 いつしか、六年生の教室の水飲み場には幽霊がとり憑いてるなんて噂話が流れるけど、私と友美はしらんぷりだ。 でも、たまに。 誰にもナイショで……。 彼が私の為に守ってくれた蛇口で、水を飲む。 彼がしたように、ちょっとだけ唇を触れさせて。 ***end
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