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私の後ろにいた女の子は、さっと私の前にまわると目の前で手を振った。
「気がついてる?」
「う、うん」
目の前にいる女の子は、友美だった。あのときの片想いモードな表情とは違い、険しい顔で水飲み場の淵に腰掛ける彼を見ている。
「暮羽にちょっかいかけないで」
友美の背中に庇われて、私はもう訳がわからない。するとすぐに彼がひらひらと両手を振った。降参、とでも言うように。
「怖い顔で睨むなよ。ごめんなぁ、淋しかったからさ、君もこっちに来てくれないかなって、誘ったんだ」
謝りながら、彼の目は彼の言う通り……少し淋しそうだった。
「……こっちって、どっち?」
いまいち理解できなくて、置かれた状況もわからないまま口から疑問を吐き出すと、目の前で友美がため息を吐いた。
「彼は、もうこの学校の生徒じゃないの。三年前に……死んでるの」
そんなこと言われても、彼は私のクラスの……一組の生徒だ。クラスメイトだ。
「そんなわけないじゃない、だって同じクラスの……」
「じゃあ、彼の名前、言える?」
そう言われて私は、口を閉じた。
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