96人が本棚に入れています
本棚に追加
彼のことは前から知ってはいた。
このクラブで毎月第三金曜日に行われるイベントではいつも見かける顔だったし、その度に違う男に抱かれているのも知っていた。
誘えば簡単にやらせてくれて、やり捨てても後腐れなく知らない顔してくれる。そういう男だと噂に聞いていた。
でも行きずりの男とやるくらいのことは俺だって経験がないわけじゃないし、さほど気にも留めていなかった。
あの日以来、彼を見かける度に目で追ってしまう自分がいた。
壁際で目を閉じて音楽に聴き入っている彼。
カウンターで他の男に声をかけられている彼。
細い肩に腕を回されてフロアから出て行く彼。
彼が寝る何人もの男たちの中に加わりたいわけじゃないけれど。
彼の身体を知りたい、その服を脱がせたい、細い手首を痕が付くほど強く掴んで壁に押し付けて、舌がつるまでめちゃくちゃなキスをしたい。
彼の全部を暴いて奪って、壊してやりたい。
彼を犯す妄想をする度に、そんなこと出来ないくせにと自分で自分を嘲笑った。
最初のコメントを投稿しよう!