#01

5/22
前へ
/78ページ
次へ
「ソルティ・ドッグ、好きなの?」 「うん。でもこれはテールレス・ドッグ。グラスの縁に塩を付けないソルティ・ドッグのことをそう呼ぶんだって」  しっぽのない犬。それはどことなく彼のイメージにぴったりで、彼自身もそれを知っていてこれを選んでるんだろう。 「俺、あんたのこと知ってたよ」  少し得意げに、俺の心を試すような言い方。  これは、妄想なんじゃないか。  俺が生み出した妄想。  だって俺みたいに地味で内気なタイプの男を、彼のような人間が相手にしてくれるわけがない。 「いつも俺のこと見てただろ。あんたが、頭の中で俺のこと犯してるって知ってたよ」  彼は俺の手からコップを取り、自分のものと交換しながら言った。 「……それを、現実にしない?」
/78ページ

最初のコメントを投稿しよう!

96人が本棚に入れています
本棚に追加