#05

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 駅からクラブまでの道は久しぶりでも身体が覚えてるのに、周りの景色がすっかり変わって見慣れない店名の看板ばかりだ。  もう彼はこの店に来るはずがないだろう。  わかってはいるけれど、探さずにはいられない。  バーカウンターでドリンクチケットをモヒートと交換する。  ミントとラムの甘い匂い。  これを飲んでいれば、また彼が声をかけてくれそうで。  わずかな可能性にもかけてしまう。  ミラーボールと派手な照明に照らされる人の顔に、懸命に目を凝らす。  踊る人でごった返すフロアを彷徨っていると、懐かしい顔に会った。  俺のようにかつてここで会っていた誰かを探している人も大勢いるのだろう。  久しぶり、誰々も来てるよ、と何人もと言葉を交わすけれど。  フロアにもトイレにも、いくら探せども、彼の姿はない。  いやに焦って苛々して、じっとりと背中と手のひらに汗をかいている。  これじゃまるで薬の切れた中毒患者だ。
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