#05

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 それから毎晩会社が終わると、阿佐ヶ谷駅をそのまま通り越して、西荻窪駅で降りた。  もう他に何の手がかりもないけれど、彼がこの駅を利用していることは確かだ。  各駅停車のホームのベンチに何時間も座って、降車する人の中に彼の姿を探していた。  こんなことで見つかったら奇跡だ。  自分だって馬鹿なことをしてるってわかってる。  ただ、そうせずにはいられないのだ。  あてもなく彼を探す夜が続き、今日こそ諦めよう、と何回も思うのだけれど。  気付くと降りるべきだった阿佐ヶ谷駅を通り過ぎていて、結局西荻窪へ向かってしまう。  そんなことを繰り返していた。
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