#05

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 ある晩、終電の時刻が近づきそろそろ帰ろうかと思い、ふと反対側の快速のホームに目をやると。  彼がいた。  一瞬目が合って、彼は逸らして。  ふいに振り返って、もう一度俺を見た。  彼の視線に鼓動が止まりそうになって戸惑っているうちに、彼は人の波に消えていく。  階段を駆け下り雑踏をかき分けて、彼を追いかけた。  見失うな、今見失ったらもう二度と捕まえられない。  オフホワイトのシャツに濃い色のジーンズ、グレーのカーディガン、斜めがけの黒い鞄。  あれは絶対に彼だった。  人波の中に彼の顔を懸命に捜すけれど、見つからない。  あの顔はあの佇まいは、絶対に忘れないはずなのに。  何処だ、彼は何処にいる。
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