#05

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 改札の向こう側に彼は立っていた。  また目が合って、今度は逸らさない。  整わない息を必死で抑えながら、混んだ改札口で人にぶつかりながら、やっとの思いで彼の前に辿り着いた。 「俺のこと、ずっと探してた?」 「えっと……ここにいれば、もしかしたら逢えるかもって……」 「毎晩来てただろ。駅前で主人の帰りを待ってる犬いるじゃん。あれみたい」 「気付いてたなら、なんで……」 「ここじゃなんだからさ、どっか入ろう。あんたの家でもいいよ」  一瞬でも目を逸らしたら逃げてしまいそうな気がして、彼の手首を掴んで新宿方面行きのホームに戻り、引き摺るようにして俺の部屋へ連れて行く。  リードを引っ張らなくても自ずとついてきてくれたのに、今は引く手に身体の重さを感じる。
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