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ホテルの部屋に着くと、彼はコンドームの箱を鞄から取り出し、ベッドの上に置くと、そのままそこに黙って座った。
服を脱がされて愛撫されることを当然の手順だと思っていて、それを待っている。
俺に犯されるのをただ待っている。
「……脱ぎなよ、自分で。全部」
口に出してから、自分らしくない台詞を吐いてしまったと急に心拍数が上がる。
いざ生身の彼を目の前にすると、頭の中で描いていたようなことをする自信が揺らぐ。
俺の言葉に従って、彼はゆっくりと自身の服を剥ぎ、裸身を晒す。
その姿を爪先から額まで、見落とすことがないように隅々までじっくりと観察する。
目が合うと、恥ずかしそうに下唇を噛んで逸らした。
どうせ俺も彼が寝る何人もの男の1人なんだ。
いつもと違うことをしたって誰かに知られるわけでもないし、今日限りのことなんだから。
そう考えたら心構えが出来た。
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