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男は微睡む意識の中、頭痛と吐き気に襲われる。今まで何をしていたのか考えつつ右手で自然と皺のよる眉間を抑える。
男はゆっくりと立ち上がる。回らない頭を振り、思考能力の回復を待ちつつ、周囲を見渡す。
木々に包まれた見覚えの無い場所。遠くで鳥のさえずりが聞こえてくる。
男は混乱していた、吐き気と頭痛など気にならないほどに、状況が理解できない。
この場所に来るまで何をしていたのか、何故ここで眠っていたのか、自分自身について何故か思い出せない。
名さえ思い出せ無い状況。うっすらと記憶喪失という単語を思い浮かべる。
男は歩き出していた。訳も分からず、ただこの場に留まる理由が無かったからだ。
木々の隙間から見える景色、延々と木が生い茂り、それ以外の物は見つけられ無い。
男はふと空を見上げると、太陽の眩しさに顔を顰める。木は高くは無く、広がる青空を見る事ができた。
心地よい風が、肌に触れる。
男は焦燥に駆られる事も無く、徐々に状況を受け入れつつあった。
心は穏やかで、先程までの倦怠感は消え去り、解放感さえあった。
しばらく森の中を進む。景色の変わり目を探しながら、ゆっくりと歩む。
男は耳を澄ましていた為か、物音が近づいてくる様に感じた。
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