十一月八日昼休み前

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「いつもと同じ一週間前からテスト勉強を始めたら間に合わないよ」  私と真琴はいつも瑠璃子にテスト勉強を見てもらっていた。普段ならテスト休みの一週間で勉強してなんとかなっていたけど、今回の真琴にそれは使えない。 「一週間で詰め込む量を、何日かに分散させてテスト勉強するしかないと思うの。休み時間も使ったりして」 「むむむ」 「それにテニス部は赤点を取ったら大会には出さないって話だったよね」  真琴はいつも赤点ギリギリで、瑠璃子のおかげでどうにか赤点を免れていた。  痛いところを突かれたようで、真琴は眉を寄せたまま黙る。  私たちが瑠璃子に勝てるはずがないのだから、始めから降参したらいいのに。  そう思いつつも、私はお弁当を食べながら黙って成り行きを見守る。  そこに、教室の入口から割って入る声がした。 「おーっす。どうした皆で黙って」  私はドアの方を背にして座っていたから、声の主が誰かは見えなかったけど、見なくても声で分かる。清晴だ。 「テスト勉強の話よ」  瑠璃子が清晴に答えた。 「もうテスト勉強の話なんかしているのか」  頭にずしりといつもの重さがかかる。  私の頭の上に、清晴が手を置いたのだ。 「ちょっと、手!」 「はいはい」  清晴は返事をするが、私の頭をポンポン叩くだけで、手を退かす気配はない。  いつもこうだ。  鬱陶しい清晴の手を払おうとするが、簡単にひらりとかわされてしまった。 「今回はいつもと違うから、早めにテスト勉強を始めたいのよ」  瑠璃子が清晴に説明した。 「あー、いいんじゃないか? 勉強はどれだけやってもやり過ぎってことはないからな」 「そうよね」  瑠璃子は清晴の言葉にうんうんと頷く。 「晴香もしっかり教えてもらえよ。お前バカなんだから」  バカにするかのように、清晴が私の頭をポンポン叩いた。
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