十一月八日昼休み前

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「清晴にバカなんて言われたくない!」  私は思い切り清晴の手を払った。今度は清晴の手をパチンと弾くことに成功した。  私はそのまま立ち上がり、後ろに立っていた清晴を睨む。  高校に入ってますます身長が伸びた清晴だったが、運動部だからかさらに筋張って男臭くなってきた。そのせいか、清晴にそばに立たれると、威圧感が出て来た。  少しはねた髪やファッションに無頓着なところは昔と変わらないのに、体格には明確な差が出ていた。  清晴のくせに生意気な。  清晴を睨むのに、見上げなくちゃいけないのもさらに腹立たしい。  私は強気に顔をグッと突き出す。 「清晴だって私の成績とどっこいどっこいじゃない。私がバカなら清晴もバカよ」 「けど、俺は晴香より悪い点数を取ったことはないからな」 「それは十点未満の話でしょ」  確かにテストの総合点で清晴に勝てたことはない。でも、それはあと数点で勝てる範囲。だから、通知表の評価はほぼ同じで、教科によっては清晴より良い場合もあった。 「負けは負けだ」  清晴は鼻で笑う。その態度に、私はカチンと来た。 「たった数点なんだからいつでも勝てる!」 「お、じゃあ賭けるか?」 「いいわ。やってやろうじゃない」 「今回の期末テストで総合点が高かった方が勝ちな。負けた方は勝った方の言うことを一つだけ何でも聞くってことで」 「楽しみね」  私はわざと高圧的な態度で笑みを見せつける。 「精々頑張れよ。ま、俺が勝つけど」  清晴も不敵な笑みを浮かべた。 「私が勝つわよ!」 「じゃあな。約束は守れよ」  私をバカにして満足したのか、清晴は教室から出て行った。それを睨んで見送ってから、私は怒りのままに席にドカッと座った。 「瑠璃子。私も早めにテスト勉強始める。真琴。一緒に頑張ろうね」  私は真琴に向けてグッとこぶしを握った。
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