十一月八日昼休み前

5/8
前へ
/23ページ
次へ
「……巻き込まれた」  真琴がボソリと呟く。 「巻き込まれたじゃないわよ。真琴はやらなきゃいけないの」 「ぐぐぐ。……分かったよ」  瑠璃子の言葉に、真琴もついに観念したようだ。ただ、真琴の顔は若干、不満げだった。 「テストが終わればすぐに冬休みなのだから、ここが頑張りどころよ」 「そういえば、冬休みといえばクリスマスだな」  真琴が強引に話を変えてきた。無理やりにでもテストの話を終わらせたいらしい。 「また今年も皆で集まろうぜ」  クリスマスの話は楽しそうだったので、私ものっておく。 「いいね。二十四日と二十五日どっちにする?」 「二十四日はテニス部でもクリスマスパーティーやるから二十五日だと嬉しい」 「瑠璃子は?」  瑠璃子の方を見ると、瑠璃子が固まっていた。 「あれ? もしかしてどっちも予定ある?」 「あ……。今はないのだけど……」 「今は?」  真琴がずずいと瑠璃子に顔を寄せた。 「まさか彼氏か?」 「え? 彼氏?」  そんなの聞いていないぞ?  私も瑠璃子にずずいと寄る。 「ち、違うよ。いないいない」  イスを心持ち下げて、瑠璃子は両手を横に振った。でも、慌てようが何だか怪しい。 「彼氏じゃないなら彼氏予定か? 誰かから告白された?」  瑠璃子は優しげな雰囲気と可愛らしい笑顔から、男子の人気が高い。見上げられて微笑まれると、ギュッとして守ってあげたくなるともっぱらの評判である。さらさらの長い黒髪も大和撫子のようでキレイだと、男子たちが言っているのを聞いたことがあった。  誰かからクリスマスを前にしての告白は十分あり得る。 「ないない」  瑠璃子は手を振ってこれも否定した。 「じゃあ、もしかして瑠璃子が告白するとか?」 「え」  瑠璃子がぴたりと止まり、顔が真っ赤になった。 「おおっ! マジで告白すんの!」  真琴が興奮気味に大声を出した。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加