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誰かの声が聞こえる。
私を呼ぶ誰かの声が。
私はその声をよく知っているような気がする。
でも、頭の中にもやがかかったように思い出せない。
誰なのか考えるほど、もやは強くなっていく。
思い出そうとする間にも、声は必死に私の名前を呼んでいた。
それがとても悪い気がして。
思い出さなければいけない気がして。
その誰かを確かめたくて目を開けようとしたのに、開けることが出来なかった。
どうしたんだろう?
身体がとても重くてだるい。
疲れている時みたいに、動くのがとてもおっくうだった。
呼ぶ声はまだ聞こえている。
私はここにいるよ。
そう伝えたかったけど、何故か声が出なかった。
どうしてだろう?
だんだんと声が遠のいていく。
声がどこか遠くに行こうとしている。
でも、まだ叫んでいるのは分かった。
ごめんね。
答えられなくて。
聞こえているから。
あなたの呼ぶ声は聞こえているから。
返事が出来なくてごめん。
ついに声は聞こえなくなった。
声が聞こえなくなると、自分が凄く眠いことに気が付く。
寝不足だっただろうか?
とても、眠い。
ここはとても静かで、寝るのにはちょうどよかった。
もう寝てしまおう。
考えることも、動くこともやめて。
とろりとした眠気は、私に心地良さを与える。
このまま気持ち良さの中へ。
私は意識を手放した。
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