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ロストハピネス・オンラインは最新のVR技術を注ぎ込んだ体験型ゲームで、脳波を読み取る専用のヘッドセットを付けることで、ゲームの世界を現実世界と同じように体験することが出来る。
この浮いている黒いボックスも目の前に出ている文字やアイコンも現実には存在せず、脳が見せているただの映像。実際の私は自分の部屋のベッドに寝ているはずだ。
自分の格好を改めて確認すると、布の服の上に胸当てやブーツなど簡単な鎧を付け、マントを羽織っていた。髪の長さも胸まである。
現実では肩までしかないが、ゲーム内では髪を長く設定していた。
間違いなく私はロストハピネス・オンラインの中にいる。
私は転送の為のウインドウを消した。
とりあえず場所は理解出来た。
けど……。
私は首を捻った。
いつゲームに入ったっけ?
ゲームを起動させた覚えが、私には全くなかった。
ここはロストハピネス・オンラインの入口となるグループゲートだ。ゲームを始めると、まずここに出る。
つまり、私はついさっきゲームを開始したことになる。なのに、それを覚えていないのはどういうことだろうか?
頭の中を探っても、どうしても思い出せなかった。
訳の分からない状況に、何だか寒気を感じる。
今は何時だろうか?
現実の時間を確認するにはメニューを開けばよかったはず。
メニューと書かれた右上のアイコンを触ろうと手を上げたところで、赤髪の男が視界の端に入った。
そういえば、男は私が突き飛ばしてから全く動いていない。
ここはグループゲートで、主にグループ登録している仲間と集合する為に使われる。
私はこのゲームを始めたばかりで、グループ登録している人はほとんどいない。
となると、この男は……。
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