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「清晴?」
名前を呼ぶと、抱き付いてきた男の身体がピクリと揺れた。でも、それ以上の反応はない。
しかたなく、私は近寄らずに男の頭の辺りの空間を指でタッチした。ロストハピネス・オンラインでは視界全体がタッチパネルのような仕組みになっていて、視界の中でプレイヤーの頭の辺りをタッチすると、プレイヤーの公開データが出てくる。
男の頭部から、四角いウインドウがにゅっと出現した。それのプレイヤー名を確認する。そこにはキヨハルと表示されていた。
「やっぱり清晴じゃない」
まあ、今のところこのゲームに誘えているのは幼馴染の清晴しかいないから、清晴以外はありえないのだが。
「いったいどうしたの?」
操作がおかしかったから、もしかして清晴以外の誰かかと心配になってしまった。
「清晴?」
もしかして、清晴にも何か変な現象が?
動かない清晴に私は不安になってきた。
「ねえ、大丈夫?」
近寄って清晴の肩を叩こうとしたら、清晴が急に立ち上がった。
「……あー、ごめんごめん。ヘッドセットの装着を間違ったみたいだ。動作がおかしいから直していた」
「何だ。そうだったの」
心配させられたことに何だか腹が立ったけど、機械の誤操作ならしかたがない。
それよりも、私は清晴に聞かなきゃいけないことがあった。
「あのさ、実は私、何でここにいるか分かんないんだけどさ。清晴は何か知ってる?」
同じ時間帯にゲートを使っているということは、清晴と私は何かしらの約束をしてここで落ち合ったということになる。清晴なら何か知っているはずだ。
「……覚えていないのか?」
「うーん。……全然」
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