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「これ、おいしいね。何の肉?」
「さて、何の肉でしょう。ヒントはどこでも手に入るもの」
妻の問題を肉を噛みながら考える。確か妻は今日買い物に出掛けると言っていた。そしてヒントはどこでも手に入る……きっとスーパーで売られていた肉に違いない。でも牛肉か豚肉か鶏肉か。
「んー、鶏肉?」
「ぶー。はずれ」
答えて早々に妻からはずれを言い渡され、更に皿の上に切り分けた肉の一欠片をひょいと摘まんで食べた。
「あ、おい」
「何?」
「何?じゃないだろ!なんで勝手に食べるんだよ」
「だってあなた、はずれちゃったじゃない。次こそ当ててよね?」
妻の中では、はずれたら肉を食べてもいいことになっているみたいだ。
「じゃあ、豚肉?」
「ぶー。違うわ」
またはずれだ。妻はまた一つ食べる。
「やっぱり、この肉はおいしいわ。あんまり食べられないのが残念ね」
妻の言葉と最後の答えで確信が持てた。やっぱりあれしかない。
「わかった!牛肉だ!そうだろ?だって…」
「ぶー。全然違うわ」
「えっ?違う?」
「えぇ。違うわ。はずれよ」
妻はぱくりと一つ食べた。そして皿にはもう一つしか肉は残っていなかった。
「だめだめなあなたに大ヒントよ。食材になっているのは二足歩行。今、この場に二人いるわ」
「まさか…そんな」
「さぁ、あなた。正解を出して」
「でも、そんなこと、あるわけ……」
「あなたもおいしいって言ったじゃない。答えて?」
「に…人間の、肉」
「正解よ」
妻は笑ってそう言った。そして肉を摘まんで、僕に食べさせた 。
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