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「何なんですかあいつは!」
喫煙室の空間に怒りをぶつける関口。それを無言で受け止めながら、滝沢が煙草に火をつける。
「検事ってのはみんなあんな奴なんですかね。ちょっと顔がいいからって。」
「お前、そりゃただの嫉妬だ。」
滝沢は苦笑いを浮かべて正論を返した。
「まあ、俺もまさかあんな若いのがくるとは思わなかったけどな。」
そう吐き出した言葉が、煙と共に空に消えていく。
「あの人工知能はどうなるんでしょうか。通常の裁判にかけられるもんなんですか。」
「そんな訳がないから俺たち警察も逮捕してないんだよ。今の法律からすると、あれはサテライト社が開発した機械…物だ。物には責任能力は問えねえだろう。だから拘束にとどめてる。裁判にかけられるとすりゃあ本人じゃなくサテライト社だろうな。業務上過失致死だ。」
ただ今回はなぁ…と滝沢が渋い顔をしながら続けた。
「単純にみりゃ、ありゃ事故だ。今それを殺人にしているのは、責任能力がない人工知能が自供したという事実だけ。かなり信憑性が高い証拠を並べんと起訴は難しいだろう。まぁ、ごり押しで起訴まではしたとしても、裁判ではまず勝てない。」
しかしこれだけ大々的に報道されていれば、不起訴ならバッシングの嵐が待っている。それを恐れて無理矢理にでも裁判を起こしたとしても、無罪判決がでれば検事人生は終わりを告げるだろう。
「…あの検事さん、貧乏くじ引かされたのかもな。」
あんな性格だからそりゃ嫌われるでしょと同調した気でいる関口は、滝沢の言葉の意味までは理解できていないようだった。
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