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事件が起きた翌日、日本中がその動乱に巻き込まれていた。 〔人工知能、人間を殺害〕メディアのけたましい報道と同じように、その場所を管轄する品川警察署内も慌ただしく人が動いている。佐伯晃はその喧噪の中に静かに入った。 「お待ちしておりました。」 出迎えた署長に一礼し、案内される方へ歩みを進める。たどり着いた扉を開くと、長机が並ぶ室内に年の離れた二人の捜査員が座っていた。佐伯はそこでも一礼し、連れられた椅子に腰を下ろす。 「被疑者を拘束した刑事です。」 そう告げられた二人は同時に立ち上がり、自己紹介を始めた。 「品川警察署刑事課強行犯係の滝沢です。こちらは同じく関口です。」 先輩刑事の滝沢が代表して口を開き、隣にいた関口は短く頭を下げる。通常の刑事事件では検事が警察署に赴くことはないが、この異例の事態に佐伯が送り込まれた。 「東京地検の佐伯です。よろしくお願いします。早速ですが、拘束に至った経緯までお聞かせ願いますか。」 その言葉を受け、滝沢が事件経緯の説明を始める。 「12月1日15時3分、当署に入電がありました。通報者は高崎麻衣、サテライト社の社員研究員です。内容はイベント会場で男性が突き落とされ病院搬送、被疑者はその場で取り押さえているといったものでした。通報を受けて私と関口が現場へと向かい、15時20分ごろ到着。会場には15組、50名の参加者、5名のイベントスタッフ…これは同社の研究員です。そして、2体の人工知能がおり、被害者である上島圭一郎はすでに病院搬送され、搬送先で死亡が確認されました。2体いた人工知能の内1体が殺害を認めたため、15時30分、その場で逮捕…いや失礼、拘束しました。」
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