4/11

14人が本棚に入れています
本棚に追加
/137ページ
画面の中のには晴れ渡った空が広がっている。そこに映る人々はみな防寒具を身に付け、当時の気温の低さを物語っているが、風もなく概ね良好な気候具合だったことが伺える。サテライト社の敷地の中はほとんどが緑地帯となっており、その一角に広がる公園のような広場に子供たちのとその家族の声がこだましていた。 「このイベントは『フューチャーチルドレン』というもので、サテライト社が主催しています。10歳未満の子供を持つ家族を対象に月1回のペースで開催されており、参加者は毎年4月に一般公募されますが、毎回抽選が行われるほどの人気のようです。毎月様々な企画・実験などを行い、12月のこの回はクリスマスツリーの飾りつけイベントを行っていました。」 カメラが切り替わると、画面に入りきらない建造物が映る。クリスマスツリーだ。カメラマンが根本から上部へと徐々にティルトアップしその全容を伝える。高さは30mあるそうですと、滝沢の補足がさらに加わった。 画面に映る人々は、みな笑顔だった。自分の背丈ほどあるのではというくらい大きなオーナメントを自慢げに見せる2人の兄弟。それに寄り添い、顔をほころばせる両親。 「これが、今回の被害者の上島圭一郎氏です。」 誰しもが思い描く、幸せな風景がそこにはあった。自分より大きいオーナメントを持とうとする弟は、5歳くらいだろうか。当然、持てるはずもない。そこに、弟には分からいように兄が手を差し伸べた。弟は上手に持てたことが嬉しくて満面の笑みを浮かべ、そのまま家族4人でカメラに手を振っている。数分後にこの家族に悲劇が訪れると、誰が予測できただろう。 30mもの高さに飾りつけを行うため、作業には高所作業車が用いられている。1家族ずつがスタッフである研究員と共にバケットに乗車し、順番に飾りつけを行う。そうして、全ての家族の飾りつけが終わり、頂上に光るトップスターの取り付けが始まった。 「ここから、事件が発生します。」
/137ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加