いらっしゃいませ

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いらっしゃいませ

歪んだ町並みに、ひっそりと佇む大きくも無く小さくも無く適度な広さを持つ喫茶店-本の蟲- 店には大繁盛と言うほど人は居ないが、ちらほらとお客が居る。 そこのマスターは、カウンター越しにコーヒーグラスを拭いており その音が心地よく響く程店内は静か。 ここは、本好きの間ではそれなりに有名な喫茶店 店内には外からの光を遮らない様に邪魔にならない程度に壁を埋める本の数々 表に無くともマスターに聞けば大抵の本は裏から出てくる不思議な喫茶店 それがここ本の蟲という喫茶店 読書喫茶と言うべきなのか…常連さんも新しいお客さんも本を手にマスターの淹れるコーヒーや紅茶を味わいながら過ごしている。 なんと、本を読むのであれば飲み物代は無料らしい… 「つまるところ…図書館ですよね?」 「もっと柔らかい所だよ。 別に、雑談をしてくれても構わないからね。」 いつもの様に、マスターは仕事をしながら答えてくれる。 私は本が特別好きと言う訳でもないけど…この店の雰囲気は好き かくいう私も、ここの常連の一人になっている。 「今日もミルクティーでいいかな?」 「アイスで甘めにね!」 「分かっているよ」 そう告げるとマスターは慣れた手つきで私に出すミルクティーを淹れ始める。 本当、このマスターのミルクティーは格別で甘さも私好みのいい感じ 「今日は、何を読むのかな?」 「マスターの本を読もうかな」 要望を告げる私に、マスター微笑ながら一冊の本を出してくれる。 これはマスターが書いたと言う本で、私が今このお店で読破しようとしている本だ。 というより、私は別にお目当ての本があるわけでもなく目的は今から出てくるミルクティーであり 本は、タダ飲みするついでに読んでいるだけで… 「あれ?新しい本?」 「それが一番初めに書いた本だよ」 「前に来た時に読み始めたの、まだ読み終わってないんだけど…」 「きっと、どれを渡しても同じかなと思ってね」 「ハハハ…」 ミルクティーが目当てなのはバレていたみたい… それでも、マスターは嫌な顔を見せず笑顔で私のミルクティーを差し出してくれる 「待ってました!」 「ごゆっくり」 目の前に置かれたミルクティーを一口飲み、私は本を開く そして、頭では別の考えをしている。 きっと、私以外にも飲み物目当ての人は居るはず!と…
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