夏と言えば怪談1

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雪は、黙示に挨拶をして林檎の頭を軽く撫でるとカウンター横から黙示のいるカウンターの内側へ そして、そのまま黙示の後ろにある暖簾から店の奥へと入ってく 「雪さん!私、雪さんのパフェ食べたい!」 「380円ね」 「サービス!」 「つけにしとくね」 黙示はカウンター下からノートを取り出し、数ページめくり林檎ちゃんと名前が書かれたページに'380円'と書き足していく そのページには、既にかなりの数字と所々その数字の上から赤線が引かれている 「も、もしかして…」 「サービスもするけど、僕は食い逃げは許さない主義なんだ」 「しゅ、出世払いで」 「期待しているよ」 チラッと視界に入ったページの内容を見て、林檎は苦笑いを零し 黙示はニッコリと笑い、その笑顔に林檎の苦笑いに引き攣りが足され 目が泳ぎつつも将来支払いを約束する 「黙示さん、あまりかわいい女の子を虐めてはダメですよ」 「そ、そうですよ!黙示さん虐めよくない!」 微笑みながらパフェを持ってきた雪を見て、水を得た魚の様に意気揚々と林檎は黙示の言葉を責める 「でも、出世払いには期待しとくわね」 「ぅ…はぃ…」 雪の追い討ちの言葉に意気揚々としていた林檎は声小さく返事を返し 目の前に置かれたパフェを口にする 「そういえば、一体何を話していたんですか?」 軽く手を拭いた雪が、先程までの話を内容を黙示に聞く 「最近、林檎ちゃんの学校で噂になっている口裂け女のお話を聞いていたんです」 「あら、口裂け女ですか? この辺にもいるんですね」 「みたいですよ」 パフェを食べながら、その美味しさに顔がとろけた様にだらしなくなっていた林檎は、黙示と雪の話に付け加えるように話し始める 「そうなんです! 私の高校の男子達が口裂け女を討伐するんだーって深夜徘徊して、有名な撃退法とか色々試したみたいなんですけど… どれも効果が薄かったみたいで、結局は二階に逃げて朝まで待ってたみたいですよ」 「撃退法は撃退法であって、討伐とは別物だからね」 「それに、口裂け女に限らず妖怪や幽霊は、そんなに軟じゃないですよ」 林檎の話を聞き、ニッコリと笑い言葉を返す黙示と雪にポカーンと間抜けな顔を見せる林檎 二人の知ったような言葉に気になり林檎は聞いた 「黙示さんと雪さんは、そういうのに詳しいんですか?」
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