記憶の共有

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記憶の共有

私達は、記憶の共有は出来ません。 多重人格で一番困るのはこれといってもいいでしょう。 例えば、リコが私が中で寝ている内に出かけるとします。 起きていてリコと話をしていた、中で外を見ていた 人格以外には外の状況は中にいる人格には分かりません。 よって、こんなことがよくあります。 「ごめんなさい、チヒロちょっと代わってもらえる?」 「ああ、いいよ、じゃあ交代な。」 この間交代を行います。 「外か・・・ん?ちょっと待てここ何処だ、おい」 自宅にいるのかと思いきや何故か大勢の人が歩く店の中。 「え?大型ショッピングセンターだけど?お買い物中。」 「交代する前に状況説明ぐらいしてくれ・・・。」 などというやり取りが毎度行われます、はい。 私もトイレで真っ最中に交代して怒られることもしばしば。 交代しろっていうからしたのに怒るなよって思いますが よく考えると説明すればいいだけでしたわ、すまん。 この他、私、チヒロは基本人格、つまり一番最初の人格から 記憶を押し付けられているためこれまでの記憶全てを ある程度把握し、日々の生活を送っております。 他の人格達は、過去の記憶がないために外での生活は困難なのです。 話しを聞く限り外は知らない人しかいないから怖い、とのこと。 しかし、記憶があるとはいえこの記憶を自分の記憶として 受け入れられない部分も多いのですね、私は。 自分が関わった人じゃないですから、知ってるけど 記憶にはあるけど私はあなたと初対面だよ、みたいな。 なかなか厄介な問題で日々振り回されております。
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