序章

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ザーー。 ザーー……。 ザーー………………。 放送を全て終えた後のテレビに流れるような、無機質で無感情な砂嵐の音が部屋中に鳴り響く。 「まただ……」 僕は半ば呆れたように目を覚ました。 日付が変わる直前の真夜中のこの時刻、最近決まって家の呼鈴が押されている。 僕は眠たい目を擦って玄関まで行き、ドアをゆっくりと開けた。 いつもと同じようにそこには人影は無く、ミュウミュウと虫が鳴く音が遠くから聞こえてくるだけだった。 ……悪戯にしては度を越えている。 こんな事が一ヶ月以上も続けられているお陰で、睡眠を毎日決まった時間に妨げられている僕の身体は大きな悲鳴を上げていた。 僕は気だるい身体を再度室内へと戻すと、倒れるように布団の中に潜り込む。 自分の温もりが残った布団の中は暖かく、気持ちが良い。 睡眠を繰り返すのは難儀そうではない。 ………………。 最初の内は、どんな人間がこんな事をしてくるのか酷く気になったものだ。 呼鈴が押された後にそれが気になってしまい、朝まで寝付けないという日さえあった。 しかし、人間の慣れというものは実に恐ろしい。 こんな迷惑な出来事を、日常生活における一つのルーチンとして受け入れてしまっている自分がいるのだ。 その事に僕は驚きを隠せない。 これは慣れなのだろうか? 神経が麻痺してきているのだろうか? それとも……? ……とにかく眠ろう。 僕は努めてそう思った。 明日は……誕生日なのだから。 微睡みかけていた僕の意識は、完全な睡眠という名の地点へと向かい、坂を下るように急降下していった。
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