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澄心の術により、吹き飛ばされた将兵は、地面を転がり物言わぬ遺骸へと、その身を変えていた。
これに大岩山に陣を張る、塙団右衛門隊の将兵たちは。
「奴は何者かッ。手も触れずに味方を倒したぞッ」
「皆が倒される前に奴は何かの呪文を唱えていたッ」
「奴はただの坊主ではないッ。妖しい術を使う陰陽道の者かもしれんッ」
「そんな奴を我らに倒せるのかッ」
などと口々に言い皆が。
「お前が行けッ」
と、譲り合っていた。
そんな中、塙隊の大将である塙団右衛門が姿を現し。
「坊主1人を取り押さえる事もできぬのかッ。儂が手本を見せてやるッ」
と、澄心を取り押さえ様と、団右衛門はズイと進み出て。
「儂は明智光秀が配下の重臣5指に名を列ねる塙団右衛門なりッ。坊主に恨みはないがッ。お主を取り押さえねばならんッ。抵抗しない方がいいぞッ。誤ってお主の首を跳ねてしまうかもしれんからなッ」
そう言って、団右衛門は澄心を取り押さえ様と、澄心に近付こうとした。
だが、団右衛門の歩みは数歩だけ進んだだけで、その歩みは止まってしまう。
「どっどうなっているのかッ…。かっ…。体が動かんッ」
そう団右衛門は言い、自らの体の異変に気付いた。
そんな団右衛門に澄心は。
「お前の体の自由は奪った。お前が命は私の手の内にある。さぁ如何いたす?」
そう団右衛門に問いかけ、ニヤリと不敵な笑みを浮かべ、その澄心の顔を団右衛門は見詰めながら、ある事に気付き、そして団右衛門は澄心の目を凝視しながら。
「お主…。めっ…目が見えぬのか…?」
と、団右衛門は澄心に問いかけ、これに澄心は、一呼吸間を空けた後。
「人とはとかく目に見えるものにとらわれる事がある。私は目が見えぬ事で幼少の頃から目以外の感覚がとぎすまされ。そして遂には幻術を身に付けていた。その事で回りから疎まれ。親にさえ捨てられた。外見から見えるもので私という存在を悪魔か妖魔の様に親も他の人も見た。私という人がどういう人か外見と幻術。とぎすまされた目以外の感覚だけを見て…。目に見えるものだけで判断は良くない。お前たちは目に見えるものだけで私がどういうものか判断して私に挑んだ。それがお前たちの失敗だ」
そう澄心は言い、そして団右衛門は天高く浮かび上がらせ、そして勢いよく地面に叩き落とされたのである。
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