思わぬ再会

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気を取り直し仕切り直しのつもりでチョコに手を伸ばした。 母の影響かチョコに少し酸味がある物が大好きで、小さい頃から『クランベリーチョコ』が好物。 注文したチョコも一粒はクランベリーが入ってる物をチョイスしている。 『あ、美味しい……』 外のほろ苦いチョコにクランベリーソースがとてもよく合い、ホワイトチョコも少し入る小技も効いていて、大きさも丁度いい。 これは人気なのも分かる気がした。 一時の幸せと感じるような味で、目の前に男性が座っている事も忘れるくらいだ。 コーヒーを一口飲んで余韻を楽しんでいると、男性の前にもチョコレートが運ばれてきた。 『そっか、人居たんだよね』 置かれた物を見て「?」と少し違和感を覚えたのは、私と全く同じ品だったからだ。 偶然にしては何だか不気味な気がするので、これは早くもう一つ食べて店を方が出た方がいいのかもしれない。 怪しまれないように二個目を食べるとコーヒーに手を伸ばす。 話掛けないで下さいオーラを出して席を立って店を出る事にした。 『焦った、何だったんだろう今の人』 足早に店から離れ人通りが多い道に逃げ込む。 後ろを確認してみたが人が多くてよく分からない。 でも何となくついてくる人はいなかったので、そのままウィンドウショッピングを楽しむ事にした。 可愛いディスプレイを見ていると、テンションが上がってくるし、次のお給料がでたら洋服を買いに来ようと目標も出来る。 今日はそのまま帰宅する事にし、ウィンドウ沿いを歩いていると、一つのディスプレイに目が止まる。 綺麗なグラスがあって『カフェで出したらいいかも』と釘付けになっていた。 ふとガラス越しに景色が見えると、先程の男性が少し離れた所からこちらを見ている。 「――ッ!」 後ろを振り向くのも怖いが、でもあのハットは間違いない。 どうしようと悩んでいると、徐々に男性が近づいてくるのが分かり考えた挙句、逆に思いっきり振り向く事にした。
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