思わぬ再会

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思わぬ再会

小さい頃のトラウマは中々消えないもので、大人になってからもたまに夢に見てしまう。 仕事は輸入のお菓子専門店での勤務していて、担当は高級チョコだ。 店も可愛いし贈り物や自分へのご褒美に購入する方も多く、女性客を中心に人気のお店になっている。 販売をしたりブログを更新したり、好きな物に囲まれて働くのは夢だったので達成感もある。 今後カフェも併設しようという話も出ているくらい、順調に顧客を増やしていた。 休日にはヨガやジムに行って気分転換をしたり、他のお店をチェックしたりがお決まりのコース。 最近ファッション誌で『今週のオシャレさん』でたまたま撮影された事もあり、それ以降は自分磨きも気合が入っている。 今日もヨガを済ませお気に入りのお店に足を運ぶ事にした。 そこは白い建物の三階にあり、一階と二階は洋服のお店になっている。 お洒落な感じの造りなので、いつもより可愛い服を着て行くのも気分がアガる。 スイーツの中でも、ひと粒ずつセレクトできるチョコが評判で私も、ファンの一人だ。 店内に入るとガラスケースの中にケーキやチョコが並んでる。 見た目可愛いし小ぶりなので、ついつい目移りするがチョコが並べてある方に移動し、二粒ほど注文して席に着いた。 『新作楽しみだな……』 店内を見回しながら、何かいいアイデアが浮かんだらメモしておこうと注意深く観察する。 暫くすると白の清潔感のある食器が目の前に置かれる。 コーヒーも細長いワイングラスのような容器に注がれていて、デジカメで写真を撮ると早速頂く事にした。 「ここ、いいですか?」 不意に声を掛けられ手が止まると、目の前には黒いハットを被っていて、細身の男性がいる。 背も高くてモノト―ンでまとめられた服装もお洒落だ。 「――はい」 他の席も空いているのになんで、相席を頼んでいるのか分からないが、特に怪しい所もないし素敵な感じなのでついそう答えてしまっていた。 男性は黙って座ると私の手の辺りを見ているが、ハットを深く被っているのでこちらから顔を覗く事は出来ない。
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