保健の先生

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「ナル君!!」 アヤちゃんの声は聞こえ、 意識は有るはずなのに、返事が出来ない。 …返事どころか体を動かす事もままならない。 「ナル君っっ!!」 アヤちゃんは涙が滲んでいるかと思う程、 僕の名前を何回も叫んでいる。 こうして感じる事は確かに出来ているし 意識はハッキリとしている。 なのに。 僕の体がどうしてもいう事を利かない。 「…ちょっと、待って。ウェンディ」 「どうしたの、冥! もうギブアップかしら?」 「…違う。ナル君がおかしいようね…」 「そう言ってわたしの隙を作るつもり?」 「…なら、見て!ナル君を」 アヤちゃんは僕の意識を取り戻そうと 必至に僕の名前を呼び続けている。 「あのアヤの態度を見ると、 嘘ではなさそうね…。分かった。 ここは一旦剣を収めない?」 「『運命』とはいつも気まぐれ…ね。 では、この決闘。中断しよう」 「神の悪戯(いたずら)」 とでも云うのだろうか? だけど、たまには悪くない。 「えぇ、そうね。中断しましょう」 ウェンディと冥はお互いに確認を 取り合った上で<タレント>を解除した。 とりあえず、は。
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