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そんなアルバイトもあと1ヶ月で終わる。わたしの「かわいい」は終わるんだ。
ある日、日本人の女の子4人組がこのカフェへやってきた。日本ではまだまだ有名ではないものの、徐々に知名度をあげていっているらしい。見るからに女子って感じで、「かわいい」に時間とお金をかけてます、って感じの女の子たちだった。きっと台湾にも「かわいい」を求めてやってきたのだろう。
大学では日本語を勉強していたので、実はわたしは日本語が少し話せる。「かわいい」があふれている日本が好きで、いつか行ってみたいなと思い必死で勉強した。
日本人の女の子たちは、ひとしきり「かわいい」を連呼し、首から下げた一眼レフカメラとスマホで写真を撮りまくっていた。彼女らは注文するカップケーキと紅茶を頼んだところでやっと落ち着きを取り戻し、席に座った。
時間は午後8時。一日歩き回って疲れたのか、しばし無言…だったのは3分だけ。そのあとは何やらけっこう大きな声でトーク。海外だからなのか、もとからなのかわからないけれど、店内に響く女の子たちの声。オーダーが入った紅茶を作りながら、耳を傾ける。
仕事のこと、恋愛のこと、お金のこと。そのどれもがシビアで現実的なものだった。
仕事自慢、彼氏自慢、親か彼氏から買ってもらったブランド物自慢、女子力の塊たちはそんな話しかしないんだろうと思っていた。かわいくいるためには、かわいさを常にアピールしなくちゃいけないんだと思っていた。そうやって武装しないと、女子としてかわいく生きていけないと思っていた。
でもこの女の子たちは違った。みんなそれぞれ飾らない今を、自分を、生きていた。もしかしたら普段は違うのかもしれない。でも今この場所では、素の自分でいるように見受けられた。
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