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薄く雪の積もった下草を、走るブーツの踵が踏み散らす。小枝がぴしりと肌を打つ。
己の激しい息遣いが、冬の森に響いていた。
葉のない木々の梢の向こうに見える空は、薄暗く藍色に染まり始めている。
吸い込む空気は肺を刺すほど冷たく、心臓は今にも壊れそうだ。
背後から迫りくる獣の足音と、低い唸り。
走りながら振り返る。
森の薄闇に潜むよう、そこには無数の光る目があった。
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