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それは遠く彼方で 響く汽笛の様に それはどこかの公園の 子供の声の様に 懐かしさと 切なさを 織り交ぜたような 優しい心で 向こうでくるくる回る 赤い傘が こっちを向いて 微笑んだ いつの間にか汽笛は すぐそこにいた 煙を吐く煙突が 笑っている 笑っている 子供たちが渡る橋が 叫んでいる 叫んでいる そうやって今日が過ぎて 誰かに会いたくなって それを馬鹿正直に言うことが 僕にはできなかった そうやって今日が過ぎて どこかへ旅立ちたくなって それをする勇気も知恵もない 僕にはできなかった 今日も知らない場所で 内臓が騒ぐ それを良しとしない者が 暴れている 心が集う 未来が揺れる 「もしそれが幻なら」 そうは考えずに 幻の中で君が 笑っている 笑っている 応えるように僕も 笑っている 笑っていた そうやって今日が過ぎて 君に逢いたくなって それを馬鹿正直に言うことが 僕にはできなかった そうやって今日が過ぎて 何一つ変わらなくって それを見つめられないから 僕はまた泣きそうだ
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