夏。

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『夏といえば怪談』――  一体どの様な経緯で此の様な言葉や風習が発現するに至ったのか……  此の物語をご拝読されてゐる方々はご存じだろうか? 『暑い夏を肝を冷やすことで涼しくなろう!』  日本の文学業界がホラー作品の販促を理由に『上記』の様な適当な理屈を故事付けて商業的な目的で無理やり作った風習だと誤解してゐる方もきっと多ゐだろう。  ――否。  其れはご拝読者の方々の酷く勝手な認識の誤りであると苦言を呈し、先に此の場で其の誤解を正しておこう。  あゝ、真の答ゑは至って単純で或り、そして明確で在ると謂ゑる。  夏――  そう、此処、日本国におゐて此の時期は、ご拝読者の方々が俗に『幽霊』と呼称する存在が事実として溢れかゑってゐるからで或る。  あゝ、此れは我が日本国における独自の風習で或り、外海の方々に同様の話を説ゐても理解されぬ事が暫し或る故、注意が必要と成る事も追し、書き綴っておこう。  8月13日――『迎ゑ火』  8月16日――『送り火』  俗に『お盆』と呼称される此の4日間は、此処、現世に『死者』の方々が帰還する忌日で或る。  故、由って其の4日間におゐては日本国の至る所でご拝読者の方々が俗に『幽霊』と呼称する存在を確認する事が可能と成るのだ。  更に追し、書き綴る為らば、此処、日本国におゐて上記の忌日以外は『死者』の方々を確認する事は絶対に不可能で或ると断言する。  春秋冬の全く時期外れにも関わらず、『死者』の方々とのご遭遇。又は其の気配を感じる等と口にする輩は、先ず間違ゐ無く『大法螺吹き』であるか、もしくは脳や精神に重大な障害を患ってゐる人間で或るかのどちらかで或る。  故に、そうゐった輩がご拝読者の方々のお傍にゐる場合は余りお近づきには為らずに寛大な心を以って温かな瞳でご観覧されるのをお薦めしたい。
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