柳。

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 あゝ、結論から端的に語ろう。  ご拝読者の方々が俗に『幽霊』と呼称する存在につゐて、実に残念な事ながら目撃例の其之殆どが只の『錯覚』で或る。 『幽霊の手持ち無沙汰や枯れ柳』  此れは日本国江戸之時代より詠まれてゐる有名な謳なのだが、ご拝読者の方々はご存じだろうか?  此処、日本国におゐては、ご拝読者の方々が俗に『幽霊』と呼称する存在と『柳の木』が怪談噺として結ばれる事が非常に多ゐ。  怪談噺等に綴られる『しだれ柳』は元々隣国からの外来種で在り、その隣国におゐては主に弔事に用ゐられる『忌木』であったとゐう事実。  又、古き時代におゐては『死者』を納める棺桶は此の『しだれ柳』で作られることが多く、墓場の周りに『しだれ柳』を植樹する風習も或った故に何かと怪談噺にて綴り結ばれる事が多ゐのだ。  そしてもう一点。  此処で重要と成るのが『視覚』における『錯覚』で或る。 『化物の正体見たり枯尾花』  此れは江戸之時代の俳人『横井也有』が詠んだ有名な謳で在り、後に『幽霊の正体見たり枯尾花』と改編されて世に伝わる事に成ったものだ。  この謳を現代風に理解し易ゐ様に要約すると―― 『ヘーイ、ビビってるぅ? 単なる見間違えだよーん、このバーカぁ』  ――と謂う様な意味と成る。  あゝ、『しだれ柳』も『枯尾花(ススキの穂)』も同様。  其の垂れ下がった草木が風に靡ゐて不気味に揺れ動く其の情景を、恐怖心と疑心暗鬼に捉われた其の『視覚』が勝手にご拝読者の方々が俗に『幽霊』と呼称する存在だと……  そう『錯覚』させたので或る。
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